特別区Ⅰ類では、第2次試験(人事委員会面接)の冒頭で「3分間プレゼンテーション(通称:3分プレゼン)」が実施されます。
3分プレゼンについては毎年多くの受験生が頭を悩ませており、具体的にどのようにプレゼン対策を進めていったらよいか分からない方がほとんどだと思います。
そこで今回は、特別区Ⅰ類における3分プレゼンのポイントや原稿の作り方について解説していきます。
- 3分プレゼンの概要
- 3分プレゼンのポイント
- 3分プレゼン原稿の構成・作り方
本記事の内容を参考に3分プレゼンを成功させ、最終合格を勝ち取りましょう!
3分間プレゼンテーションとは?
特別区の「3分プレゼン」とは、「挑戦したい仕事」「強み」「志望動機」の≪3要素≫について3分でプレゼンするというもので、これは例年面接カードの設問1に下線部のような指示が記載されています。
あなたが特別区でどのような仕事に挑戦したいか、あなたの強みと志望動機も含めて具体的に入力してください。(250字以内)※面接の冒頭に3分間程度でプレゼンテーションしていただきます。
つまり、面接当日にいきなり3分プレゼンを要求されるわけではなく、エントリーの時点で第2次試験において3分プレゼンが実施されることが事前に周知されています。
3分プレゼンは面接の冒頭で行われることになりますが、実際の面接では下記のような流れで実施されるのが一般的です。
①面接室に入室し、着席する
②簡単なアイスブレイクが行われる
③「3分間でプレゼンテーションをしてください」と指示を受けたらスタート
ちなみに、特別区経験者採用のほうでも過去に「3分程度で話してください」とランダムに聞かれた事例がありますが、3分プレゼンが正式に”課題”として与えられているのは特別区Ⅰ類・Ⅲ類・氷河期採用のみです。
【重要】3分プレゼンの完成度は高く!
3分プレゼンは先述のとおり「面接の最初に行われるイベント」であるため、受験生の第一印象を形成するという意味において、成功できるか否かが面接の合否に影響を及ぼすと言っても過言ではありません。
冒頭でよいプレゼンができれば面接官に対してプラスの印象を与えることができますが、反対に微妙な仕上がりになってしまうとその後の面接も微妙な雰囲気のまま進んでしまうことになります。
しかも、3分プレゼンはいきなり求められるわけではなく事前に与えられている課題ですから、面接官としても「ちゃんと準備してきているはず」と期待をしています。
これらを踏まえると、3分プレゼンの完成度が高ければ高いほど、面接で有利なスタートを切りやすくなるのは確実であるといえるでしょう。
なぜ3分プレゼンが行われるのか?
面接で3分プレゼンを実施するというのは、他の基礎自治体ではあまり見られない取組です。
では、なぜ特別区はわざわざ3分プレゼンを行うのでしょうか?
この理由について考察してみると、私は下記の2つが考えられるのではないかと思っています。
- 特別区への志望度の高さをみるため
- 論理性の高さをみるため
採用する立場に立って考えてみれば、長く働いてくれるやる気のある受験生を採用したいと考えるのは当然ですから、すぐに辞めてしまいそうな志望度の低い受験生は弾きたいところです。
そこで、3分プレゼンのようにしっかりと対策をしないと通用しない”障壁”をつくることで、特別区を第1志望とする受験生を見極めたいと考えているのでしょう。
特別区への志望度がそこまで高くない受験生は、おそらく準備もそこそこに本番を迎えることになるでしょうから完成度の低いプレゼンとなり、結果として他の受験生と差がつくことになります。
また、事前に与えられている課題に対して「問われていることを正確に理解」し、「話を論理的に展開できているか」というのもポイントです。
特別区は基礎自治体ですから、入庁後に担当する業務のうちの多くは住民対応であり、かつチーム単位で仕事を進めることになります。
この点、理路整然とプレゼンを成功させることができれば論理的に話を組み立てられるコミュニケーション能力の高い受験生であると判断され、公務員(特別区職員)としての資質を持っていると評価することができましょう。
これらの理由を踏まえると、きっちり時間をかけて3分プレゼン対策を行うことの大切さがお分かりいただけると思います。
3分プレゼンはいつから準備する?
3分プレゼンの準備時期については、1次試験が終わったタイミング(4月末以降)がちょうどよいと思います。
その理由として、下記の試験実施日程から逆算して考えていきます。
受験申込期間 | 3月8日(金)~3月25日(月) |
---|---|
第1次試験日(筆記試験) | 4月21日(日) |
第2次試験日(面接試験) | 7月8日(月)~7月18日(木) |
3月上旬には申込み(エントリー)が始まることから、当サイトでは面接カードは2月末~3月上旬に完成させておくことをオススメしています(詳細は「面接カードの書き方」で解説)。
では、3分プレゼンも同じように3月上旬までに完成させておかなくてはならないのかというと、決してそういうわけではありません。
たしかに、特別区の3分プレゼンは面接カードの設問1と連動しているため、それぞれの内容に齟齬が生じないようにするためには面接カードと同時期に作成するのがベターです。
しかし、後ほど詳しく解説しますが、3分プレゼンの原稿は約900~1,000字程度とボリュームがあるため、最初からこの字数の原稿を作り上げようとするとかなり時間がかかってしまいます。
したがって、まずは面接カードの項目1を作成してから、あとで3分プレゼン用に肉付けしていくというやり方が効率的といえます。
もちろんもっと早い時期に作成しておくというのもアリですが、あまりに早すぎる時期に作成すると、あとで内容の変更が大変になる(結局一から考え直さなくてはならない)こともある点には注意しましょう。
3分プレゼンのポイント4選
3分プレゼンの概要についてご理解いただいたところで、ここからは3分プレゼンでおさえておくべき4つのポイントについて紹介します。
(1)3分以内におさめる
3分プレゼンの発表時間は「3分以内」を目指しましょう。
もちろん「3分を超えたら即不合格」というわけではありませんが、与えられた時間を大幅に超えてしまうよりは時間内におさまっているほうが印象はよいため、「2分50秒前後」で終わるように調整しておくことをオススメします。
3分以内といえど、「2分程度」やそれ以下となってしまうと準備不足と判断される可能性が高いため注意しましょう。
3分以内におさめるには、面接本番までに練習を重ねて3分という時間感覚を身に付けた上で、たとえ緊張等で少し言葉を失念してしまっても文章を臨機応変にコントロールできるようにしておくことがポイントです。
(2)話し方を工夫する
特別区の3分プレゼンは資料等を使用しない「ひたすら3分間話すだけ」という形式ですから、プレゼンの間、受験生は3人の面接官からずっと見られている状況になります。
そのため、声が小さくて何を言っているのかが聞き取りにくかったり、何度も言葉に詰まってうまく話せなかったりすると準備不足と判断され、残念ながら好印象を持ってもらうことは難しくなってしまいます。
3分プレゼンでよい印象を与え、その後の面接もよい雰囲気で進めていくためには、下記のように話し方にも工夫が必要ということですね。
- 声を張る(小さい声×)
- 抑揚をつける(棒読み×)
- 表情をつける(真顔×)
- ハキハキと話す(滑舌が悪い×)
- スラスラと話す(言葉に詰まる×)
- 聞き取りやすいスピードで話す(早すぎor遅すぎ×)
プレゼンの内容自体がまとまっていることはもちろんですが、話し方・伝え方にも注意しながら豊かな表情でハキハキと発表できるように練習をしていってください。
(3)原稿の添削と模擬面接を受ける
3分プレゼンの原稿を自分なりに作成したら、内容的に問題がないか第三者からチェックをしてもらってください。
予備校に通っている場合には、必ず講師に添削を依頼しましょう。
独学の場合にも予備校の単発のサービスやキャリアセンター等を利用し、第三者に添削をしてもらうことをオススメします。
また、ある程度内容をインプットして話せるようになったら模擬面接を申し込み、本番に近い状況でプレゼンを行う練習をしましょう。
自分一人や気心の知れた人の前で練習をするのと、目の前に見知らぬ第三者がいる状態で練習をするのとでは緊張度合いが大きく異なります。
「模擬面接でプレゼンをやってみたら途中で内容が飛んでしまった」というのはよくあることですから、ぜひ緊張感のある場所で発表をする練習を取り入れてください。
(4)プレゼンへの深掘りに備える
3分プレゼンが終わるといよいよ面接に入っていきますが、このときに「先ほどプレゼンで話していた○○について~」というように、面接官からプレゼンの内容について深掘りがなされます。
そのため、3分では伝えきれなかったことを補うイメージで、プレゼンのどの部分を聞かれても具体的に話せるように準備しておきましょう。
「挑戦したい仕事」「強み」「志望動機」は特別区の面接において核となる部分ですから、面接対策を進めていく際にはまずここをしっかり固めることがポイントです。
3分プレゼン原稿の全体構成
次に、3分プレゼン原稿の全体構成について見ていきましょう。
(1)字数は900~1,000字程度
一般的に人が話す速度は1分間で約300字程度といわれているため、全体の字数でいうと900~1,000字程度を目安に作成するとちょうどよい仕上がりになります。
字数・時間の構成としては、例えば下記のようなやり方があり得るでしょう。
構成 | 字数 | 時間 |
---|---|---|
始まり | 40~60字程度 | 10秒程度 |
①挑戦したい仕事 | 300字程度 | 50~55秒程度 |
②強み | 300字程度 | 50~55秒程度 |
③志望動機 | 300字程度 | 50~55秒程度 |
終わり | 30字程度 | 5秒程度 |
トータル3分程度で話し終わればよいので、例えば「挑戦したい仕事:350字程度」「強み:300字程度」「志望動機:250字程度」といったように、自分の話しやすい形に多少比重を変えても問題ありません。
ただし、例えば「強み」だけ50字程度にするなど極端に内容が減ってしまうとバランスが悪いため、3つともある程度同じくらいのボリュームを目指して作成していくのがベターです。
最終的な字数や時間配分は各人の話す速度にも依存してくるため、あとは原稿を実際に読みながら細かい字数を調整していってください。
(2)始まり・終わりは簡潔に
3分プレゼンの始まりでは、本題に入る前に簡単な挨拶と構成の説明をしておきましょう。
【始まり】
それではプレゼンテーションを始めます。●●、●●、●●(3要素)の順にお話しします。よろしくお願いします。
この一言があれば、これからどのような順序で何を話すのかが大まかに伝わり、面接官が話に集中しやすくなります。
そして、プレゼンの終わりには下記のような一言を入れ、プレゼンが終了したことを明確に合図しましょう。
【終わり】
以上でプレゼンテーションを終了します。ありがとうございました。
プレゼンの始まりと終わりにダラダラと説明を入れたり、いきなり本題に入ったりするよりも、このような文言を入れるだけで簡潔かつ分かりやすいプレゼンになります。
(3)3要素の順番に決まりはない
「挑戦したい仕事」「強み」「志望動機」の順番は「こうしないとNG」というものはなく、自分が話しやすい流れで作成すれば問題ありません。
例えば、「挑戦したい仕事→強み→志望動機」の順でもいいですし、「強み→志望動機→挑戦したい仕事」の順でもOKです。
最もおさえるべきポイントはプレゼンの論理展開や話し方の部分ですから、自分の話しやすい順番で構成を考えていくようにしてください。
3分プレゼン原稿≪3要素≫の作り方
ここからは、3分プレゼン原稿における「挑戦したい仕事」「強み」「志望動機」の≪3要素≫それぞれの作り方について解説していきます。
なお、下記の特別区の面接カードの書き方の記事では、≪3要素≫の考え方やポイント等について詳しく解説していますのであわせてご覧ください。
さて、≪3要素≫それぞれの内容に入る前に、まずは≪3要素≫すべてに共通する構成について触れておきたいと思います。
- 結論
- 理由・背景
- 特別区の課題・特別区における重要性
- 貢献意欲・抱負(自分の経験等をこのように活かせる、課題解決に貢献できる)
基本的には、「挑戦したい仕事」「強み」「志望動機」のどの要素についても「結論→理由→課題→抱負」という上記の流れで作成していくのがオススメです。
「③特別区の課題・特別区における重要性」については、全体の文章を見ながら適宜入れ込んでいく形でもよいでしょう。
この前提をおさえた上で、さっそく≪3要素≫それぞれの作り方について雛形例を挙げながら見ていきます。
①挑戦したい仕事
まずは「挑戦したい仕事」について、先述の「結論→理由→課題→抱負」に沿って作成した雛形例をご覧ください。
【①結論】
- 私が挑戦したい仕事は○○です。
【②理由・背景】
- その理由は、~からです。
【③特別区の課題・特別区における重要性】
- 特別区の○○(挑戦したい仕事)においては、~という課題があります。
- 特別区においては、~が重要であると考えます。
【④貢献意欲・抱負】
- これまでの~の経験を活かし、○○(挑戦したい仕事)の課題解決に貢献します。
- 私の強みである□□を活かし、~の課題解決に尽力していきます。
冒頭の【①結論】では挑戦したい仕事を挙げます。
例えば「教育」や「高齢者福祉」に携わりたい場合には「ICT教育の拡充」や「認知症高齢者への支援」など、具体的に取り組みたいことを挙げられるとよいでしょう。
次に【②理由・背景】として「なぜその仕事に挑戦したいと思ったのか」を述べます。
様々な理由が考えられると思いますが、ここでは実体験に基づいたエピソードを交えると説得力が増します。
最後に【③特別区の課題・特別区における重要性】と【④貢献意欲・抱負】の部分で、「特別区ではこういう課題があるから解決していきたい」「特別区ではこういうことが重要だから自分の強みを活かしたい」という流れですね。
挑戦したい仕事については、特に「なぜその仕事をやりたいのか」「自分はどう貢献できるのか」を明確に示すことが重要です。
特別区の業務や取組について調べた上で、これまでの学生生活等で培ってきた経験をしっかり整理し、論理的に伝えられるようにしておきましょう。
②強み
続いて「強み」について、雛形例を確認していきます。
【①結論】
- 私の強みは□□です。
【②理由・背景】
- 私はこれまで~に所属し、この力を培ってきました。
- 私はこれまで~を経験し、この力を発揮してきました。
【③特別区の課題・特別区における重要性】
- 特別区においては、~が重要であると考えます。
【④貢献意欲・抱負】
- 私の強みである□□を活かし、特別区の~に貢献します。
冒頭の【①結論】で強みを挙げたら、次に【②理由・背景】で「その強みをどのように培ってきたのか」「どのような場面で発揮してきたのか」根拠となるエピソードを述べます。
例えば「リーダーとしてチームをまとめる中で培った」「ボランティア活動で発揮した」など、具体的な状況説明をすると分かりやすいですね。
ちなみに【③特別区の課題・特別区における重要性】と【④貢献意欲・抱負】は、「挑戦したい仕事」や「志望動機」で内容が重複している場合はカットしてもよいでしょう。
強みについては、特に「どう培ったのか」「特別区でどう活かせるのか」を明確に示すことがポイントです。
自分の強みが特別区でどう活かせるのかを述べるためには、特別区の特徴や業務について理解しておかなくてはなりませんから、ホームページや説明会などを通して自分なりに情報収集をしておくようにしましょう。
③志望動機
最後に「志望動機」について、雛形例を確認していきます。
【①結論】
- 私が特別区を志望した理由は~です。
【②理由・背景】
- ~がきっかけで特別区の仕事に興味を持ちました。
- ~を経験する中で、特別区職員として働きたいと考えるようになりました。
【③特別区の課題・特別区における重要性】
- 特別区においては、~が重要であると考えます。
【④貢献意欲・抱負】
- これまでの~の経験を活かし、特別区の~に貢献します。
冒頭の【①結論】で志望理由を挙げたら、次に【②理由・背景】で「なぜ志望するようになったのか」根拠となるエピソードを述べます。
字数に余裕があればきっかけから述べても構いませんし、いきなり理由を述べる形でもよいです。
ちなみに【③特別区の課題・特別区における重要性】と【④貢献意欲・抱負】は、「挑戦したい仕事」や「強み」で内容が重複している場合はカットしてもよいでしょう。
志望動機については、特に「なぜ他でもない”特別区”を志望したのか」を明確に示す必要があります。
どこの自治体にも当てはまるような内容だと「特別区じゃなくてもいいのでは?」「公務員だったらどこでもいいのか?」と思われてしまいますから、「特別区で働きたいんです!」という思いが示せるように根拠のあるエピソードをしっかり準備しておきましょう。
まとめ
今回は、特別区の3分プレゼン対策について解説しました。
面接対策を進めていくにあたっては、3分プレゼンで与えられている「挑戦したい仕事」「強み」「志望動機」の3つについて固めることが最重要になります。
面接のよい雰囲気づくりをするためにも、本記事を参考に面接冒頭の3分プレゼンを成功させられるように完璧に仕上げていってください。
なお、特別区の面接カードの書き方については下記の記事で解説していますので、参考にしてみてください。