【特別区】論文対策と予想テーマについて解説!2024年度版

数ある公務員試験の中でも、論文の重要度が高いといわれているのが「特別区」です。

特別区の配点は完全非公表とされていますが、最終合格(第1次試験+第2次試験の総合成績)の順位が高い人から希望区の面接に呼ばれることになります。

そのため、配点が大きいといわれている論文試験で高得点を獲得することが極めて重要です。

また、仮に第2次試験(面接試験)でミスをしてしまっても、第1次試験の論文での貯金があれば安心ですから、論文で高得点をとっておくのは正しい戦略だといえるでしょう。

とはいえ、膨大なテーマがある中で、どう対策を進めればよいのか分からないという受験生がほとんどだと思います。

そんな受験生のみなさんに向けて、今回は特別区の論文対策方法について解説していきます。
過去問を参照しながら説明していきますので、初学者の方でも理解しやすい内容となっているかと思います。
※説明の便宜上、特別区Ⅰ類(事務区分)をメインに説明しています。

この記事の内容を参考に、論文での高得点を目指しましょう!

目次

論文試験の内容

本題に入る前に、特別区における論文試験の内容について、簡単に説明をしておきたいと思います。

特別区の論文試験の内容をまとめると、下記の表のようになります。

スクロールできます
事務区分Ⅰ類採用経験者採用氷河期採用Ⅲ類採用障害者採用
実施日第1次試験日
内容課題式(2題中1題選択)職務経験(1題)+課題式(2題中1題選択)課題式(2題中1題選択)作文(短文1題)
時間80分90分80分90分
字数1,000字以上
1,500字程度
1,200字以上1,500字程度600字以上
1,000字程度
400字以上
800字程度
試験順番教養→専門→論文職務経験論文→課題式論文→教養教養→論文教養→作文教養→作文
書式横書き原稿用紙
特別区採用試験の論文内容

ご覧いただくと分かるとおり、特別区の論文試験においては、「課題式論文」と「職務経験論文」といわれるものが出題されますが、今回は課題式論文の対策方法について解説します。

課題式論文とは、「特別区の抱える課題等に対して、解決策などを論述して解答する」という形式の論文です。
難しく感じるかもしれませんが、いくつかのポイントをおさえることで、少しずつ書けるようになります。

特別区の論文対策で重要なこと

まず、特別区の論文対策を進める上で最も大切なことは、「過去の出題テーマを把握すること」です。

特別区に限らず、教養試験等の公務員試験の勉強をしたことがある方なら分かると思いますが、過去問を知ることなしに高得点を狙うことは難しいと思います。

これは論文試験も同じで、公務員試験の対策は過去問を知ることから始まります。

もちろん、これから受験する実際の試験において、過去問とまったく同じ問題が出てくる可能性は低いとは思います。

しかし、これまでにどんなテーマが出題されたのかを把握することは、ある程度の傾向をつかむのに有効であり、論述する内容やネタを固める作業がしやすくなるという利点もあります。

まずは過去問の内容を知り、出題傾向を把握することから始めましょう。

出題テーマの分析

それでは、特別区Ⅰ類の論文出題テーマについて見ていきます(問題文の大枠のテーマのみ掲載しています)。

年度テーマ①テーマ②
2023(R5)若年層に伝わりやすい行政情報の発信人口減少下における人材活用
2022(R4)限られた行政資源による区政運営地域コミュニティの活性化
2021(R3)区民ニーズに即した公共施設のあり方SDGs・ごみの縮減と資源リサイクルの推進
2020(R2)先端技術を活用した区民サービスの向上都市における地域の防災力強化
2019(R1)外国人の増加に伴い生じる新たな課題認知症高齢者への対応
2018(H30)住民との信頼関係の構築子どもの貧困問題
2017(H29)空き家問題女性の活躍推進
2016(H28)ユニバーサルデザインのまちづくり区民の視点に立ったICTの更なる利活用の促進
2015(H27)自治体事務のアウトソーシングワークライフバランスの実現
2014(H26)自転車を安全かつ安心に利用できるまちづくりグローバル化の流れ
2013(H25)東京の魅力発信いじめ・体罰問題
2012(H24)自治体の説明責任高齢社会で暮らしやすい地域の実現
2011(H23)災害に強い地域社会のあり方・地震対策地域コミュニティの活性化
2010(H22)待機児童問題基盤となる施設のあり方・社会における合意形成
2009(H21)安心して暮らせる地域社会の実現学校選択制・これからの学校と地域社会との関係
2008(H20)自立した行政運営情報通信ネットワークの活用
2007(H19)住民との協働環境問題
2006(H18)少子化への対応安心して暮らせる地域社会の実現
2005(H17)地域福祉の向上大地震への対応
2004(H16)多様化する住民ニーズへの対応持続可能な社会の構築
2003(H15)安心できる区民生活と行政の役割働き方の多様化とこれからの社会
2002(H14)これからの地域社会と公務員の役割都市の再生と快適環境の構造
特別区Ⅰ類の論文出題テーマ一覧

一覧にして見てみると、様々な社会問題について取り上げられていることが分かります。

これらの出題テーマから読み取れることとして、重要なポイントを2つおさえてほしいと思います。

(1)言葉の意味を理解する

過去の出題テーマを見てみると、特別区特有の課題近年ホットな話題が出題されやすい傾向にあることが見てとれます。
そして、問題文の中には、行政用語ともいえる様々な言葉が使われています。

これはつまり、「行政で使われている言葉の意味を正しく理解しないと詰む」といっても過言ではありません。

例えば、2016年度のテーマ②「ユニバーサルデザインのまちづくり」や、2021年度のテーマ②「SDGs」という問題が出題された際に、「ユニバーサルデザイン」や「SDGs」という言葉の意味が分かっていないと、論述のしようがありません。

また、2022年度の特別区経験者採用の課題式論文においては、「シティプロモーションについて」という出題がありました。
これも、「シティプロモーション」という言葉の意味を理解していないと、終始間違った方向性で記述してしまう可能性があります。

特別区の課題式論文は、2題中1題を選択する方式ですから、どちらもまったく書けないという状況にはなりにくいとは思います。

しかし、初めから知識不足で選択肢が限られるよりは、どちらも選べる状況のほうが安心でしょうから、行政用語をチェックしておくに越したことはありません。

そのため、まずは、特別区の抱える課題や社会問題、話題になっているニュースなどについて日頃からアンテナを張り、知らない言葉がないようにしておきましょう。

(2)問われていることに答える

再度過去の出題テーマを見ると、一部似たようなテーマが出題されているのが分かるでしょうか。
例として、青色で2011・2022年度のテーマ②「地域コミュニティ」、緑色で2004・2021年度のテーマ②「SDGs・ごみの縮減と資源リサイクルの推進」、「持続可能な社会の構築」を示しました。

最も注意すべき点が、「似たようなテーマ」というところで、実際はどちらのテーマも少しずつ違う内容になっている点です。

例えば、青色で示したテーマは、パッと見ただけではどちらも「地域コミュニティ」がテーマに見えます。

しかし、よくよく問題文を読んでみましょう。

【2011(平成23)年度】
地域コミュニティは、地域住民が助け合って生活を営む基盤であり、暮らしやすい住環境を保つために重要な役割を果たしています。しかし、現代の社会では、地縁的なつながりが希薄化し、地域コミュニティが衰退する傾向が見られます。このような状況がなぜ生じているのか、主な要因を説明した上で、地域コミュニティの活性化について、あなたの考えを論じなさい。

出典:平成23年度 特別区Ⅰ類 論文問題

【2022(令和4)年度】
特別区では、人口の流動化、価値観やライフスタイルの多様化によって地域コミュニティのあり方に変化が生じています。また、外国人の増加も見込まれる中、様々な人が地域社会で生活する上で、地域コミュニティの役割はますます重要となっています。こうした中、行政には、年齢や国籍を問わず、多様な人々が地域コミュニティの活動に参加できるような仕組みづくりや、既存の活動を更に推進するための取組が求められています。このような状況を踏まえ、地域コミュニティの活性化について、特別区の職員としてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい。

出典:令和4年度 特別区Ⅰ類 論文問題

太字で示した箇所を見てみると、同じ「地域コミュニティ」というテーマでも、2011年度の出題にはなかった「外国人の増加」という文言が追加されるなど、時代背景を踏まえた内容に変化していることが分かります。

さらに、緑色で示した以下の出題についても見てみましょう。

【2004(平成16)年度】
現代社会は、私たちに利便性の高い生活をもたらしましたが、それを支える大量生産・大量消費・大量廃棄というシステムは、地球環境に大きな負荷を与えています。持続可能な社会の構築に向け、大都市に生活する私たちはどのように生活のあり方を見直していくべきか、あなたの考えを論じなさい。

出典:平成16年度 特別区Ⅰ類 論文問題

【2021(令和3)年度】
国際目標である「持続可能な開発目標(SDGs)」では、持続可能な生産消費形態を確保するため、天然資源の持続可能な管理や効率的な利用をめざすことが必要であると示されています。特別区においてもその目標達成に向けた一層の取組が求められており、食品ロスや廃棄物の削減を進めていくことが重要です。このような状況を踏まえ、ごみの縮減と資源リサイクルの推進について、特別区の職員としてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい。

出典:令和3年度 特別区Ⅰ類 論文問題

これらの出題に関しても、2004年度にはなかった「SDGs」という文言が追加され、まさに現在取り組んでいることや課題とされていることが問題文に反映されています。

そのため、「”防災”がテーマのときはこう書こう」「”高齢化社会”がテーマのときはこれを論述する」と決めつけて準備をしてしまうと、聞かれていることからズレた回答をしてしまうことになります。

例えば、「テーマが”防災”だったら”共助”について書こう」とあらかじめ書くネタを用意しておく分には構いませんが、問題文の「”防災”をテーマに何が問われているのか」までよく確認をしないと、論文としては完成度が低いものとなってしまいます。

「問題文に答えられていない」のは、論文試験においてご法度です。
パッと見て似たようなテーマだったとしても、論述すべき内容をよく確認するようにしましょう。

これは本当によくあるミスですから、受験生の皆さんはぜひ注意してください。

出題テーマの背景を調べる

出題テーマに即した論述をするにあたっては、テーマの背景を正しく理解していないとどうにもなりません。

例えば、以下について考えてみてください。

・刑法犯認知件数は年々減少していたものの、直近で増加したことを知っていますか?
・地方と特別区で抱えている課題が異なることを知っていますか?

背景を正しく理解していないと、テーマからズレた回答をしやすくなり、減点は免れません。
テーマの背景を知識としてしっかり持っておくことで、初めてテーマに即した論文を書くことができるのです。

これは特別区に限ったことではありませんが、論文試験においては、その自治体特有の事情をおさえることがとても重要です。

例えば、日本全体として「地域コミュニティの衰退」が進んでいる傾向にあることは確かで、このテーマについては一般論が通用するかもしれません。

しかし、「地域コミュニティの衰退」の原因や進行度合いは、地方の市役所と特別区でそれぞれ異なります。
都市部特有の事情なども背景にあるため、すべての地域で同じ対策を打てばいいわけではないのです。

書店に売られている論文のテキストでは、地方公務員試験全般に向けて、一般論でまとめられているものが多い印象を受けます。
それを特別区の論文試験でそのまま使ってしまうのは危険ですから、一般論では通用しない特別区特有の事情については、地道に知識を蓄積させていく作業が必要です。

ここまでの内容を踏まえた上で、特別区特有の背景や課題を知るための指標となるものについていくつか紹介していきます。

(1)ニュース・官公庁の発表資料

まず活用したいのが、ニュースや官公庁の発表資料(白書など)です。
ニュースは、主に新聞やテレビなどがありますが、近年はネット新聞などでも構いません。

特に、新聞やテレビは情報の鮮度が高く、手軽にアクセスすることができますから、全国レベルでの課題や特別区での課題を情報収集するには最適でしょう。
教養試験の時事対策にもなり、一石二鳥です。

また、官公庁の発表資料については、計画や会議、白書などがあります。
また、法改正は論文のテーマとして扱いやすいので、あわせて注目しておきましょう。

各省庁のホームページにアクセスすると、統計や報告書が閲覧できるので、まずは直近2年以内に更新されたものを見てみてください(「厚生労働省 白書」などと検索するとピンポイントで調べることができます)。

(2)各区のホームページ・区報

次に、各区のホームページです。
ホームページ上で調べる際には、「〇〇計画」「〇〇方針」「〇〇報告書」といったものに目を通しておくとよいと思います(「〇〇区 計画」などと検索するとピンポイントで調べることができます)。

例えば、千代田区のホームページを例に挙げると、「施策・計画」というページに「各種計画」のリンクがあるので、その中から調べたいトピックの計画等を見てみてください(スポーツ振興について調べたければ、「スポーツ振興基本計画」など)。

各区のホームページで得られるのは、基本的には各区固有の課題や目標となりますが、各区の事情を理解することは特別区全体の事情を理解することにもつながります。

論文の中で区独自の取組を例として挙げる場合にも使えるので、調べておいて損はないと思います。

また、区報については、地域活動やイベント、窓口案内など、主に住民目線の情報が掲載されています。
論文でアイディアを提案する際のヒントになるだけではなく、面接対策の一環としても役に立ちますから、ぜひ見てみてください。
区民でなくとも、ホームページからデータ版を閲覧することができます。

(3)特別区長会調査研究機構の調査研究報告書

次に、特別区長会調査研究機構が発表している調査研究報告書です。

特別区長会調査研究機構とは、「特別区及び地方行政に関わる課題について、大学その他の研究機関、国及び地方自治体と連携して調査研究を行うことにより、特別区長会における諸課題の検討に資するとともに、特別区の発信力を高めることを目的」(出典:特別区長会調査研究機構 概要)とした組織のことです。

例えば、2022年度には、「水害時の避難及び共同住宅の機能強化 (江東区提案)」といったように、特別区の重要トピックである「災害」を取り扱った調査があります。

各区長が主体となって組織されているだけあり、近年の特別区の課題等が取り上げられていることが多いので、目を通しておいて損はないでしょう。

(4)東京都庁の各種計画

最後に、東京都庁が発表している各種計画です。

例えば、「「未来の東京」戦略」においては、スマートスクールや女性の活躍推進、ゼロエミッション等いくつかの戦略が東京都の目標として掲げられています。
「スマート〇〇」や「ゼロエミッション」は、近年よく見かける言葉ですね。

その他にも、SDGsへの取組などのホットなトピックもありますから、時間のあるときに目を通してみてください。

特別区は東京都の中心地ですから、まさに今、東京都が課題・目標としているものは、特別区にも大きく関わりがあります。

余力があれば、東京都庁の論文の過去問にも目を通してみると、近年の動向がつかみやすいと思います。

近年の出題傾向

ここからは、近年の出題傾向について、おさえておくべき2つのポイントを見ていきたいと思います。

(1)長文化

まずは、以下の3つの過去問を見てみましょう。

【2003(平成15)年度】
安心できる区民生活と行政の役割

出典:平成15年度 特別区Ⅰ類 論文問題

【2011(平成23)年度】
首都直下型地震の発生は、近い将来に高い確率で予測されており、その被害を最小限に抑えることは自治体にとって大きな課題です。特別区の現状を踏まえ、災害に強い地域社会のあり方を述べた上で、大震災に対する安全・安心の確保のために特別区が果たすべき役割について、あなたの考えを論じなさい。

出典:平成23年度 特別区Ⅰ類 論文問題

【2023(令和5)年度】
スマートフォン等の情報通信機器の普及に伴い、区民生活のデジタル化が進む中で、行政の情報発信のあり方にも変化が求められています。特別区においても、デジタル・デバイドの解消を推進する一方で、今後の社会の担い手となる、10代・20代を中心とした若年層について、その情報収集手段や価値観、生活環境を理解した上で情報発信を行う必要があります。また、行政活動である以上、効果検証や継続性の視点も重要です。このような状況を踏まえ、若年層に伝わりやすい行政情報の発信について、特別区の職員としてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい。

出典:令和5年度 特別区Ⅰ類 論文問題

こうして見てみると、問題文がだんだん長文になっていることが分かります。

問題文が長文化しているということは、問題文の中に課題の背景がより詳細に記述されていることになるので、その背景に合致した内容を回答しなければならないということです。

もう一度、2023年度の問題を見てみましょう。

【2023(令和5)年度】
スマートフォン等の情報通信機器の普及に伴い、区民生活のデジタル化が進む中で、行政の情報発信のあり方にも変化が求められています。特別区においても、デジタル・デバイドの解消を推進する一方で、今後の社会の担い手となる、10代・20代を中心とした若年層について、その情報収集手段や価値観、生活環境を理解した上で情報発信を行う必要があります。また、行政活動である以上、効果検証や継続性の視点も重要です。このような状況を踏まえ、若年層に伝わりやすい行政情報の発信について、特別区の職員としてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい。

出典:令和5年度 特別区Ⅰ類 論文問題

太字で示した箇所は、課題の背景に関する内容です。
あえてこの部分を長々と記述しているということは、背景に即した内容を論述しないとNGということです。

例えば、問題文に「また、行政活動である以上、効果検証や継続性の視点も重要です。」と記載があります。
これはつまり、「一過性の情報発信方法ではダメ」ということを出題者側が暗に示しているのです。

長文になればなるほど言葉の見落としが発生しやすいので、一言一句問題文をよく読み、背景や問われていることを確実に汲み取るように注意してください。

(2)問いの変化

次に、問題文の締めくくりに着目してみましょう。

【第1段階(2003年度以前)】
短文問題

【第2段階(2004~2008年度の5年間)】
「~どのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい。」

【第3段階(2009~2013年度の5年間)】
~の課題・要因等についてあなたの考えを述べ、どのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい。」

【第4段階(2014~2023年度の10年間)】
特別区の職員としてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい。」

これを見てみると、20年の間に4段階で最後の問いが変化しています。
2009年度以降は、太字で示したように「課題」や「特別区の職員として」という文言が加わり、難易度が上がっていることが分かります。

「特別区の職員として」というのは、つまり、「基礎自治体職員である区職員にできること」を問われています。
国や都道府県庁レベルでやるような大規模な取組を書くのはNGですから、基本的には、住民と一緒になって取り組むことを念頭においた論述をしていきましょう。

また、今の形である第4段階「特別区の職員として」になってから10年が経過しました。
このままこのパターンが続くかどうかは分かりませんが、ひとまず練習をするときにはこのパターンで練習しておくとよいでしょう。

仮に問題文が大幅に変更されたとしても、すべての受験生が同じ条件(初見)で試験に挑むことになり、難易度が下がる可能性が高いので、そこまで不安にならなくても大丈夫ですよ。
※多くの公務員試験において、問題文や出題内容に変化があった年は、難易度が下がる傾向にあります。

予想テーマは?

ここからは、皆さんが気になっているであろう「予想テーマ」について触れていきますが、その前に重要なことをお伝えしておきたいと思います。

それは、「予想テーマに固執しすぎないこと」です。

なぜなら、予想テーマへの対策ばかりに時間をかけるよりも、論文を書く力を徹底的に鍛えるほうがより重要だからです。

冒頭でも説明したとおり、第1次試験(教養試験+論文試験)を突破するためには、配点が大きいといわれている論文試験で高得点を獲得する必要があります。

そして、論文試験で高得点を獲得するためには、どんなテーマがきてもクオリティの高いものを書けるようにしておかなければなりません。

そのため、まずは過去問のテーマで書く練習をし、テーマに沿ったネタをすぐに思い浮かべられるようにした上で、論文の型・書き方を身に付けてほしいと思います。

何よりも、予想テーマというのは、あくまでも「予想」にすぎません。
仮に予想テーマを重点的に対策して、当たればハッピーですが、ハズれたときの絶望は計り知れません。

予想テーマ自体を活用することは問題ありませんが、くれぐれも予想テーマに執着しすぎることのないように、過去問も含めて様々なテーマに触れるようにしておきましょう。

その上で、近年ホットな話題を予想テーマとして挙げてみたいと思います。

先述の「各区のホームページ」や「特別区長会調査研究機構」、「東京都庁の各種計画」などにおいて、特別区(東京都)の課題とされているものや、近年取り上げられることの多い話題を選抜しています。

それなりの根拠に基づいて選抜をしていますが、出題テーマを保障するものではありませんので、参考程度にチェックしてみてください。

(1)少子高齢化

少子高齢化については、みなさんご存じのとおり、全国の自治体が抱えている課題です。
もちろん特別区も例外ではなく、今後も大きな課題となっていくでしょう。

過去の出題テーマを見ると、2006年度に「少子高齢化」、2023年度に「人口減少下における人材活用」が出題されています。

これらの出題以外にも、複数の問題文で「少子化」や「少子高齢化」という文言が使われており、少子高齢化を前提とした問題作成がなされていることが分かります。

そのため、「少子高齢化」単体での出題よりも「少子高齢化の中で○○にどう対応していくか」といったように、他のトピックと組み合わせた出題が考えられるかと思います。

また、少子高齢化と関連して、「認知症高齢者への対応」についても準備しておくとよいでしょう。
認知症高齢者の話題は、2019年度に出題されていますが、4年も経過していれば再度出題があってもおかしくはありません。

(2)デジタル化関連

特別区においては、現在様々な形でデジタル化の推進を図っており、ホットな話題といえます。

例えば、渋谷区では「渋谷区スマートシティ推進基本方針」に基づき、デジタル技術やデータの活用を促進し、人口減少やコミュニティ機能の強化に取り組んでいます。

渋谷区の例は一例ですが、少子化によって人材不足が進み、効率的な区政運営が期待されている中、デジタル化関連の話題は注目しておくべきでしょう。

(3)信頼される区政運営

近年、悲しくも特別区の不祥事が目立っています。

2022年には江東区職員による入札価格の漏えい(出典:産経新聞)、2023年には練馬区職員によるマイナンバーカードの個人情報流出(出典:朝日新聞)江東区長選挙における公職選挙法違反(出典:日本経済新聞)など。

こうした不祥事が続くと、住民からの信頼を損なう恐れがあります。
「区民から信頼されるためにどのように運営していくべきか」といった論点が出てきてもおかしくないでしょう。

(4)災害対策・地震対策

現在我が国では、首都直下地震や南海トラフ地震など、将来的な大地震の発生が想定されています。
また、津波や台風などもあり、日本は「災害」と切っても切れない関係にあります。

過去の出題テーマを見ると、大きな災害や地震が発生した年付近は、それらに関連する問題が出題されていることが分かります。

2011年3月11日に発生した東日本大震災の際には、2012年度の保健師区分で「東日本大震災」に関連する問題が出題され、2019年の令和元年東日本台風の翌年2020年度には、「都市における地域の防災力強化」がテーマとして出題されました。

2024年1月1日には、令和6年能登半島地震が発生しましたので、要チェックといってよいでしょう。

(5)観光振興

2020年1月に国内で初めて新型コロナウイルスの感染者が確認されてから4年が経過しました。
2023年5月8日以降、感染症法における新型コロナウイルス感染症が5類へ変更されたことにより、インフルエンザ感染症と同等の扱いになり、世界は日常を取り戻しています。

コロナ禍で激減した観光客を取り戻すため、政府は2023年3月に「観光立国推進基本計画」(出典:観光庁)を閣議決定し、インバウンド回復戦略などを掲げました。

観光産業は特別区における重要な税収源ですから、「区としてどのように回復していくか」について考えておきましょう。

(6)外国人の増加

観光振興に関連するトピックとして、「外国人の増加」があります。

観光が盛り上がれば、確実に外国人観光客が増加し、コロナ禍前のように人の往来がしやすくなれば、外国人労働者外国人住民も増加するでしょう。

過去の出題テーマを見ると、2014年度に「グローバル化の流れ」、2019年度に「(2020年東京オリパラ開催による)外国人の増加に伴い生じる新たな課題」、2022年度に「(外国人の増加も踏まえた)地域コミュニティの活性化」が出題されています。

出題頻度やコロナ明けの現状を踏まえると、ぜひとも注目したいところです。

(7)働き方・ワークライフバランス

コロナ禍に関連するトピックとして、「働き方」や「ワークライフバランス」があります。

コロナ禍においてテレワークなどが浸透しつつあった中、新型コロナウイルス感染症が5類に変更されたことに伴い、「原則出社」に戻した企業も少なくありません。

そのような中で、「今後どのようにワークライフバランスを実現していくのか」といった視点が問われるかもしれません。

過去の出題テーマを見ても、2015年度に「ワークライフバランスの実現」が出題されたきりですから、現状を踏まえた上で準備しておくとよいでしょう。

(8)児童虐待

2016年の児童福祉法改正により、特別区において独自の児童相談所を設置することが可能になりました。
2024年1月現在、8つの児童相談所が開設されています(世田谷区、江戸川区、荒川区、港区、中野区、板橋区、豊島区、葛飾区)。

児童虐待は32年連続で増加しており、2022年度には過去最多を記録(出典:毎日新聞)するなど、特別区にとっても重要な課題といえます。

過去の出題テーマを見ると、2023年度・2015年度の保健師区分において、「児童相談所(児童虐待)」をテーマに出題がありましたが、事務区分においても重要なトピックであることに変わりはありません。

(9)ヤングケアラー

ヤングケアラーへの支援について、2023年に政府が「子ども・若者育成支援推進法」に明記する方針を固めました。
2024年の改正案提出を目指しており、「ヤングケアラー」の定義や支援について法制化されるのは、今回が初めてのことです。

ヤングケアラーの定義は、「家族の介護その他の日常生活上の世話を過度に行っていると認められる子ども・若者」とされています。
これに伴い、特別区においても、法律に基づいてヤングケアラーへの対応をしていくことになります。

東京都では、「ヤングケアラー支援マニュアル」(出典:東京都福祉局)を作成しているので、課題や対応策について考える上で参考にしてみるとよいでしょう。

(10)環境問題・ごみ問題

環境問題・ごみ問題は、現在世界的に重要な課題であることは言うまでもありません。

過去の出題テーマを見ると、2004年度に「持続可能な社会の構築」、2007年度に「環境問題」、2021年度に「ごみの縮減と資源リサイクルの推進」が出題されており、出題頻度としても少なくはありません。

また、特別区には清掃一部事務組合があり、23区のごみ処理を行っています。
ごみの埋立地問題や環境汚染については地道な対策が続いていますが、一人ひとりのごみの縮減は今なお課題となっています。

2023年末には、江東区のごみ処理施設で火事があった(出典:NHK首都圏ナビ)ので、適切なごみの分別方法などについても区として取り組めることを考えてみるとよいでしょう。

特別区の論文対策方法

ここからは、特別区受験に向けた具体的な論文の対策方法についてお伝えしていきます。
おすすめの方法として、以下の4つの手順でやってみてください。

STEP
模範答案を読み込む

まずは模範答案を何度も読み込みましょう。
可能な限り、地方公務員試験用のものではなく、特別区用の模範答案がよいでしょう。

何度も読み込むことで、論文の型や表現、行政知識が自分の中に吸収されていくようになります。

おすすめなのは、声に出して読むことです。
暗記レベルまで持っていけると、本番で似たようなテーマが出たときに困らないので、ぜひ頑張って覚えてほしいと思います。

一言一句、細かな表現まで暗記するのは難しいですから、解答の大まかな方向性やネタをすぐに思い出せるようにしておけば問題ありません。

また、テーマ数としては、15~20テーマほど準備しておくと安心です。
時間があまりない方でも、最低でも10テーマは準備しておきたいところですね。

STEP
模範答案を作成する

模範答案をある程度暗記できるようになったら、実際に書く練習に入りましょう。
この段階では、見ながらでも構わないので模範答案をそのまま書いてみてください。

「見ながらでいいの?」と思われるかもしれませんが、模範解答を参考にしながら実際に手を動かすことで、正しい文法や言葉などがより頭に入りやすくなります。

稀に、データの模範答案を読むだけで対策を終わらせている人がいますが、それはおすすめできません。
論文試験の当日は実際に紙に書かなくてはいけませんから、やはり本番を想定した練習が必要です。

実際に書いてみると、「簡単な漢字が書けない」「引用したい取組が思い出せない」といったことが起こりがちですから、ぜひとも書く練習は取り入れてください。

また、可能な限り準備したテーマについてはすべて書いてみるのが一番ですが、そこまで時間がない場合には、自分が苦手とするテーマだけでも書いておくとよいでしょう。

STEP
本番と同様の条件下で書く

模範答案を書く練習が済んだら、次は本番と同様の条件下で書く練習に入りましょう。

この段階では、次の2つのポイントをおさえてほしいと思います。

(1)制限時間内に書く

Ⅰ類・Ⅲ類採用の場合は80分、それ以外の区分は90分となりますが、実際に時間を計って書いてみると「時間がギリギリで書ききれない」ことが往々にしてあります。

1,000字以上1,500字程度を80分以内に書くのは決して楽ではありません。
段落を構成するスピードや書くスピードも人によって異なりますから、自分の感覚をつかむようにしましょう。

また、よくありがちなのが、文字が雑で汚い人です。
時間がギリギリになるあまり、走り書きになってしまう人が必ず一定数いますが、やはり採点者からすると印象は良くありません。

文字が丁寧なだけで読む人に与える印象は大きく変わりますから、普段から時間に余裕を持って、丁寧に書く練習をしておきましょう。

(2)時間帯に注意する

本番を想定した練習では時間帯にも注意してください。

冒頭で示した表を再度見てみましょう。

スクロールできます
事務区分Ⅰ類採用経験者採用氷河期採用Ⅲ類採用障害者採用
実施日第1次試験日
内容課題式(2題中1題選択)職務経験(1題)+課題式(2題中1題選択)課題式(2題中1題選択)作文(短文1題)
時間80分90分80分90分
字数1,000字以上
1,500字程度
1,200字以上1,500字程度600字以上
1,000字程度
400字以上
800字程度
試験順番教養→専門→論文職務経験論文→課題式論文→教養教養→論文教養→作文教養→作文
書式横書き原稿用紙
特別区採用試験の論文内容

特別区の論文試験では、午後イチまたは第1次試験の最後に課題式論文(または作文)が実施されています。

つまり、当日は、疲労しているタイミングで論文試験が行われることを念頭において練習しておく必要があるということです。
お昼の後で眠くなってしまったという受験生の話を聞いたことがあるので、眠気を覚ますタブレットなども持っていくといいかもしれません。

おすすめは、論文を書く練習を午後や夜に設定することです。
例えば、午前中は教養や専門の勉強をして、午後に論文に取り組むといったような感じです。

普段から、試験の時間帯付近に答案作成の時間を設定し、慣れておくと安心です。

STEP
第三者に添削してもらう

特に、独学の人でありがちなのが、論文を書いて終わりにしてしまうパターンです。

論文試験というのは、択一試験とは異なり、客観的な評価が非常に重要な科目です。
実際の論文試験も、採点者から客観な評価が下されることになりますから、間違っても自分の主観だけで完結してはいけません。

予備校に通っている場合には、必ず講師に添削を依頼しましょう。
独学の場合にも、予備校の単発のサービスやキャリアセンター等を利用し、必ず第三者に添削をしてもらうようにしましょう。

その際、評価の方法は予備校等によってまちまちかと思います。
「A・B・C・D」のように分かれていることが多いかと思いますが、平均点以上の評価が獲得できるまで添削を受けることをおすすめします。

評価を受け、自分の書き方のクセや苦手なテーマなどについてしっかり理解し、一つずつ克服していくようにしてください。

まとめ

今回は、特別区の論文対策方法について解説しました。

冒頭でも説明したとおり、特別区の論文試験は教養試験や専門試験よりも配点が大きいといわれていますから、高得点を狙うことがとても重要です。

特別区の論文試験対策は、過去のテーマや出題傾向について理解し、情報収集し、答案作成の練習を積み重ねることで、着実に合格へと近づくことができます。

論文試験は教養試験や専門試験とは異なり達成感の得にくい科目ですが、地道な努力が実を結びやすい科目でもあります。
初めはうまく書けず、心が折れることもあるかもしれませんが、みんな最初は同じです。
繰り返し練習をして、ぜひ論文を武器にしてほしいと思います。

なお、論文対策と同時並行で進めなくてはならないのが「面接カード」対策ですが、カードの書き方と記入例を下記の記事で解説していますので、参考にしてみてください。

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