本記事では、特別区Ⅰ類の中でも「早期SPI枠」の受験を検討している方向けに、通常枠との違いや試験内容について詳しく解説していきます。
- 早期SPI枠と通常枠の違い・注意点
- 早期SPI枠と通常枠のどちらで受験すべきか?
- 早期SPI枠の試験内容

「公務員になりたいけど民間も受けたい…」「なるべく早めに内定がほしい…」そんなあなたにぴったりの試験かもしれません。
なお、本記事の前に下記の記事をご覧いただくと特別区Ⅰ類採用の全体像を掴みながら読み進めていけると思いますので、ぜひあわせてチェックしてみてください。


「早期SPI枠」とは?通常枠との違い
「早期SPI枠」とは、特別区が実施する職員採用試験のうち通常の試験よりも早い時期に実施される枠のことで、2025年時点で募集されている試験区分は「事務(一般事務)」のみとなっています。
Ⅰ類採用におけるすべての試験枠をまとめると下記のとおりです。
①早期SPI枠 | ②春試験 | ③秋試験 |
このように特別区Ⅰ類では3つの試験枠があり、そのうちの1つが早期SPI枠ということになります。
最もメジャーな試験枠は「春試験」で受験者数が一番多く、早期SPI枠は新設されたばかりの枠です(秋試験は一般事務の募集がないため、以降の説明は割愛します)。
早期SPI枠の最大の特徴は、筆記試験(教養試験・論文試験)の代わりにSPI試験が導入されている点です。
筆記試験の中でも特に特別区の論文試験はしっかりとした対策が求められるため、それが丸ごとナシでSPIのみで受験できるというのはかなり大きなメリットだといえるでしょう。



これまで特別区受験のハードルが高くて諦めていた方も受けやすくなりました!
また、SPIは多くの民間企業が採用試験で利用しているため、就職活動を進めている学生にとっては比較的なじみがあり対策を立てやすいですし、春試験よりも早期に内定を得ることができるため、進路選択の幅を広げることができるのも大きなメリットです。
さらにSPIは試験日程を自分で選べるため、「東京都Ⅰ類B」と併願できるのも大きなポイントです。
これまで特別区Ⅰ類と東京都Ⅰ類Bは試験日程が被っていたため、どちらかしか受験することができませんでしたが、早期SPI枠の登場によって併願が可能になりました。
これらの特徴やメリットを踏まえ、試験制度の主な違いをまとめると下記のとおりとなります。
早期SPI枠 | 春試験 | |
---|---|---|
第1次試験 | SPI試験(テストセンター方式) | 教養試験と論文試験 |
第2次試験 | プレゼンテーションシート作成と面接試験 | 面接試験 |
3分プレゼン | プレゼンテーションシートをもとに実施 | 口頭のみで実施 |
内定時期 | 早ければ6月 | 早ければ8月 |
名簿有効期間 | 1年間 | 3年間 |
東京都Ⅰ類B | 併願できる | 併願できない |
早期SPI枠の注意点
早期SPI枠にはメリットがある一方で、注意点もおさえなくてはなりません。
大きな注意点としては、春試験や経験者採用と併願することができない点です。
つまり「早期SPI枠で落ちたら春試験(または経験者採用)を申し込もう」ということができないため、どの枠で受験するかを事前によく検討しておく必要があります。
また、前年度以前のⅠ類(春試験・秋試験)の採用候補者名簿に登載されている人は申込みができない点や、通常枠とは異なり名簿有効期間が1年間である点にも注意が必要です。
- 春試験と併願できない
- 経験者採用と併願できない
- 名簿有効期間が1年間のみ
- 前年度以前のⅠ類(春試験・秋試験)の採用候補者名簿に登載されている人は申込み不可
早期SPI枠と春試験のどちらで受験すべきか?
では、メリットや注意点を踏まえた上でオススメできるのは早期SPI枠と春試験のどちらなのか?
結論から申し上げますと、主に一般的な公務員試験対策をしている方は春試験、民間企業の就活も並行している方やたくさん併願をしたい方は早期SPI枠での受験をオススメします。
一般的な公務員試験対策というのは、教養試験・専門試験・論文試験などのことで、特別区の春試験を含め、国家公務員や県庁、政令市など比較的大きめの組織が取り入れている難易度が高い試験のことです。
こうした試験は出題範囲が広く内容も難しい分、しっかりと対策をしてきた人にとっては報われやすい試験となっているため、一般的な公務員試験対策を積み重ねてきた方は、春試験で勝負したほうが勝率は高いと考えられます。
一方で、そのような試験対策はしてきていない、都庁や民間を含めてたくさん併願をしたいといった方は早期SPI枠がオススメです。
やはり筆記試験の負荷が小さいため、対策の容易さや併願のしやすさは春試験とは大きく異なります。
これらを踏まえ、早期SPI枠がオススメな人をまとめました。
- SPIが得意
- 面接が得意
- 併願をたくさんしたい
- 東京都Ⅰ類Bを併願したい
- なるべく早く内定がほしい
- 試験対策に使える時間が少ない
- 名簿登載期間が長くなくても問題ない
- 公務員と民間を同程度に就活している(もしくは民間のほうが志望度が高い)



「SPIなら簡単に受かりそうだし受験してみよう」と安易に考えるのではなく、自分に向いている試験なのかをよく検討した上で最善の選択をしましょう。
試験日程
早期SPI枠における2025年度の試験日程は下記のとおりです。
告示 | 2月5日(水) |
---|---|
申込受付期間 | 2月5日(水)~2月18日(火) |
第1次試験(SPI) | 3月4日(火)~3月17日(月) |
第1次試験合格発表 | 3月27日(木) |
第2次試験①(プレゼンテーションシート作成) | 4月20日(日) |
第2次試験②(面接試験) | 5月12日(月)~5月14日(水) |
第2次試験(最終)合格発表 | 5月29日(木) |
春試験と大きく異なるのは第2次試験が2回に分かれている点です。
①のプレゼンテーションシート作成試験で作成したシートは②の面接試験で使用される形になります。
受験申込みから内定までの流れ
早期SPI枠の受験申込みから内定までの流れをおさえましょう。
これらの各STEPのうち、早期SPI枠におけるポイントを詳しく解説していきます。
早期SPI枠の面接カード内容
早期SPI枠の面接カードは、春試験と同様です。
(設問1)あなたが特別区でどのような仕事に挑戦したいか、あなたの強みと志望動機も含めて具体的に入力してください。(250字以内)
(設問2)あなたが一つのことをやり遂げた経験を挙げ、その中で最も困難だと感じたことと、それをどのように乗り越えたかを入力してください。(250字以内)
(設問3)目標達成に向けてチームで行った経験において、チームへの貢献につながったあなた独自のアイディアを、ご自身の役割とともに入力してください。(250字以内)
出典:2025年度 特別区職員Ⅰ類採用試験 面接カード質問
なお、面接カードは第2次試験で使用する重要書類です。
申込み時に提出しなくてはならない点で、面接カードの作成は受験生にとって実質的な1次試験ともいえるでしょう。
提出後の修正等はできませんので、構成や内容をしっかりと考えた上で作成しなくてはなりません。
具体的な面接カードの書き方や注意点については、下記の記事で解説していますので参考にしてみてください。


第1次試験[SPI試験]の内容
早期SPI枠の第1次試験はSPI試験(SPI3-U)で、いわゆる「テストセンター方式」です。
全国に設置されるリアル会場やオンライン会場で受験することができ、自分で試験日を選択することができます。
試験内容は「性格検査」と「基礎能力検査」の2つで、基礎能力検査では「言語分野」と「非言語分野」が出題されます。
言語分野は長文読解や文法的な正誤など日本語力全般に関わるもので、非言語分野は四則計算、確率、表の読み取り、論理的思考問題など数学的な応用力が求められる出題です。
難しそうに感じるかもしれませんが、SPI試験は出題パターンがある程度決まっているため、問題に慣れておけばそこまで難易度が高いものではありません。
独学で十分対策が可能ですから、書店で様々な参考書をチェックし、自分に合うものを見つけましょう。
詳しい出題内容は下記のとおりです。
SPI試験 (約65分) | ■テストセンター方式 ①性格検査(約30分)自宅等で受験 ※提示の際に各区に提供される ②基礎能力検査(約35分)全国のリアル会場またはオンライン会場で受験 言語分野、非言語分野 |
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- 「SPI試験(SPI3-U)」が課される
第2次試験①[プレゼンテーションシート作成]の内容
早期SPI枠の第2次試験はプレゼンテーションシート作成と面接試験です。
まずは試験会場でプレゼンシートを作成し、別日に面接を受ける形で2日に分けて試験が実施されます。
プレゼンシートは第2次試験の面接の評価対象となるため、きちんとクオリティの高いものを作成する必要があります。
また、このプレゼンは自己PR系ではなく行政課題系の問題のため、春試験ほどの論文対策は必要ないにせよ、行政課題に対する解決策や取組等については対策をしておく必要があります。
例として、今年の出題テーマを載せておきます。
【2025(令和6)年度】
次の資料1~3は、自転車の利用をめぐる状況に関するものです。これらの資料を見て、交通安全意識を醸成し、歩行者と自転車利用者が共に安全で快適に暮らせる環境を構築するために、特別区はどのような取組を行っていくべきか、プレゼンテーションシートを作成してください。作成に当たっては、特別区職員として職場の上司に3分間でプレゼンテーションすることを想定して、あなたが考える「表題」を記載し、「重要な課題」、「解決に向けた具体的な取組」、「期待する効果」などについて要点をまとめてください。なお、図を用いるなど表現方法は問いません。
出典:2025年度 特別区Ⅰ類 プレゼンテーション作成問題
なお、作成したプレゼンシートは一旦回収されて面接当日に渡される形になるため、どのようなことを記載したのか忘れないよう、試験終了後にしっかり控えておくようにしましょう。
プレゼンテーション シート作成(90分) | ■提示された複数の資料(統計や記事等)から、設問に基づきプレゼンテーションシートを作成 ・課題式(1題必須回答) ・A4用紙1枚で形式自由 |
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第2次試験②[面接試験]の内容
第2次試験の2つ目である面接試験です。
作成したプレゼンテーションシートと申込み時に提出した面接カードをもとに個別面接が行われます。
春試験と同様に面接の冒頭で3分間プレゼンテーションを行うことになりますが、早期SPI枠では先のプレゼンシートに基づいて実施することになります。



特別区の配点は非公表となっていますが、これまでの合格者のデータを踏まえると面接試験の配点が高いと考えられています。
そのため、1次試験を終えたら早めに面接対策に取り掛かることをオススメします。
なお、第2次試験(人事委員会面接)の詳しい試験の流れや具体的な対策方法については、下記の記事で紹介していますので参考にしてみてください。


- 試験形式は個別面接
- プレゼンテーションシートは評価対象
- プレゼンテーションシートは一旦回収される点に注意
- 3分プレゼンはプレゼンテーションシートに基づいて行う
- プレゼンテーションシートと面接カードをもとに面接が進んでいく
- 特別区では面接試験の配点が高い
なお、最終合格後は区面接に突入しますが、その際の提示は下記のようなスケジュールで行われています。
提示日程 | 早期SPI枠 |
---|---|
第1回 | 2025年5月29日 |
第2回 | 2025年7月25日 |
第3回 | 2025年10月8日 |
第4回 | 2025年11月21日 |
第5回 | 2025年12月19日 |
第6回 | 2026年1月22日 |
第7回 | 2026年2月12日 |
【よくある質問】早期SPI枠は倍率が高いからやめたほうがいい?
よくある質問として、「早期SPIは倍率が高い(高そう)だからやめておいたほうがいい?」というものがあります。
たしかに過去の試験実施状況を見ると、最終的な倍率は春試験よりも高いです。
早期SPI枠 (一般事務) | 採用予定数 | 受験者数 | 最終合格者数 | 合格倍率 |
---|---|---|---|---|
2025 | 113 | 1,716 | 309 | 5.6 |
春試験 (一般事務) | 採用予定数 | 受験者数 | 最終合格者数 | 合格倍率 |
---|---|---|---|---|
2024 | 1,312 | 6,868 | 3,035 | 2.3 |
数字だけを見ると倍率が2倍以上も違いますが、実際には最終合格した受験生がすべて区面接に挑むわけではありません。
また、一般的にSPI試験のように多くの人が受験できる区分においては併願先を複数抱えている場合も多いため、辞退もそれなりに発生する可能性があります。
したがって、倍率で受験するかどうかを決めるよりも、先のとおり「自分に向いている試験か」に着目して試験枠を決定することをオススメします。
まとめ
「早期SPI枠」は通常の春試験よりも早い時期に実施され、SPI試験で受験できる特別区の新たな採用枠です。
教養試験や論文試験の対策が不要で、SPIに慣れている民間志望の受験生にとっても大きなチャンスとなります。
春試験としっかり比較・検討した上で自分にとってベストな試験枠を選び、それに合わせた対策を徹底していきましょう。